belle époque

思ったこと考えたことを気ままに書いてます。長いので時間がある方のみ推奨です。@applebig3

サムのこと

風も暖かくなってきましたね。春の訪れを感じる今日この頃です。

 

今回は4期生7名が出演する西加奈子さん原作のドラマ「サムのこと」の原作本の感想、ドラマ設定との比較、ドラマの展望などなどについてです。まぁ要はドラマを100倍楽しもうみたいなよくある宣伝です。

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当初、僕はドラマ発表に対して「4期ちゃんドラマ決定おめでとう〜(拍手)」と思うくらいで、正直そこまで関心を持っていませんでしたね、珍しく。地上波ならまだしもネット有料配信だったからかもしれません。

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キービジュアル。これサム幽霊役みたいになってるけど、回想でしか出ないんじゃないかな笑。

 

 

f:id:applebig3:20200314213122p:imagehttps://youtu.be/kn8Hfn44uLE(予告編)

中の人が一気に関心を持っていかれたのがこの予告編。今春公開の映画かと思うくらいにクオリティが素晴らしかったです。dTV恐るべし…いやいっそ80分映画にしてみませんか? 演じる彼女達の表情、表現もプリンシパルのあの頃からの更なる成長を感じましたね。予告編でもうなんだか感慨深いです。

 『サムのこと』のストーリー自体もなんだかこちらに興味を抱かせるものでしたね。推理小説じゃないけど、謎多き人物だったサムの素顔をその死後知っていくというのは気になりました。

https://youtu.be/-u4bSE7lccM(30秒CM)

そしてなんといっても主題歌の『I see…』 タイトル公開時は落ち着いた曲だろうな…と想像し、金つぶでの解禁を聴いたらまさかのハッピー感すら漂う超ポップな曲。ドラマに合うのかこれ… だけど曲調は中の人的にはどストライクでした。好きすぎてラジオでの解禁音源を落としてリピートしまくり、歌詞すら書き起こしましたね。フルで歌えるんじゃないかなこれ?(笑)

個人の趣向はこれくらいにしまして、こんなポップな曲も意外にドラマに合っていると僕は思うのです。『サムのこと』『猿に会う』に共通するのはカッコ悪い青春時代を過ごした少女たちの再生と希望の物語ということ。『I see…』は純粋で初々しさすら感じる恋愛といった歌詞の世界観。たとえカッコ悪くとも青春時代の若さ、爽やかさに良くマッチしていると思いませんか。特に『サムのこと』、CMでさくらちゃん演じるサムが清々しい表情で疾走するシーンとサビの疾走感、とても良いオーバーラップでした。さらに付け足すと『I see…』の曲調は90〜00年代ポップス、J-POP全盛の頃の曲に似ていると言われがちなのですが、回想が多いであろう当ドラマに於いて、登場人物の青春時代に遡ると年代的にも曲調が合うのかなと思います(原作中では主人公らが大人の時点で00年代くらい)。

演じる4期生達も今青春真っ只中です。今の彼女達にしか表現することができないものがドラマにも主題歌にもあって、貴重な瞬間を我々は目の当たりにしているのだなとつくづく感じます。乃木坂46の"今"がここにあるというキャッチフレーズも的を射ているのかなと。

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最初宇田川ホワイトベアーズって聞いた時、草野球チームか!!って思いましたけどね。ベアーズとか完全にベマーズの由来ですし(懐かしきコテの読みづら過ぎる文字)。

 

話が逸れました。さてドラマが非常に楽しみになってしまった当4期ヲタクはある意味通常運転に戻り、ドラマの設定やあらすじの予習にとどまらず、気になった原作本まで購入します。決してオリジナルドラマの広告帯付きだったからじゃないですからね、純粋な内容への興味とドラマをもっと楽しんで見るためですからね。ただ中の人は先にドラマの方の設定を知ってしまっているので、そちらがデフォルトになってしまい、原作の設定にツッコんでいくというあるまじき感想になっております。

 

 

今回は『サムのこと』のみで。原作の内容を書いているので、これから読もうとしてる方はネタバレにご注意下さい。

 

 

 

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『サムのこと』(西加奈子著)は60ページ弱の短編なので本当にパパッと読み終わります。読んでみて気付いたのは、だいぶドラマは設定が違うなということです。

 

原作での主な登場人物はアリ、スミ、モモ、キム、ハス、そしてサム(回想)。

以下紹介は原作内容です。ドラマでの演者も併記しています。

 

アリ 演:早川聖来 (原作では男性)

物語の語り手、読者と視点を共有する人物。あだ名は有本から。ゲイ。LGBT設定はドラマ同様だが、仲間内では普通にいじられたり笑われたり。それについて強烈に悩んでいるというわけでもない。サムだけは真面目にLGBTに突っ込む。自分のことを比較的しっかりしていると思っている。

 

スミ 演:金川紗耶 (原作では男性)

あだ名は角から(ドラマでは蓮見から)。アリ曰くハンサムらしい。社交的な面倒くさがり(モテるけど付き合うのは面倒など)。アルバイトだが比較的まともに働いている。

 

モモ 演:掛橋沙耶香

あだ名は桃子から。酒好き。一番の怠け者。恋人がころころ変わる。読めば分かるが空気を読まない上にかなり言うことがぶっ飛んでいる。結構不謹慎。しかし時折の愛おしさで何だか憎めない。サムが好きだった相手説?

 

キム 演:田村真佑

在日朝鮮人。あだ名のキムはそのまま金から(ドラマでは恐らく日本人設定、あだ名は同じだが木村から)。これもアリ同様サム以外誰も気にしないが、サムの影響でアイデンティティについて考える。口が悪い。アリ曰く、顔はすごく可愛いく可愛い声をしているらしい。適役過ぎるなおい!!!

 

ハス (男性、ドラマにはいない人物)

あだ名は蓮見から。結構無口。キムの恋人。交際は結構長いらしく、2人でいる様子は微笑ましい。はよ結婚しろ。

 

サム 演:遠藤さくら (原作では男性)

物語の中心。アリ曰く相当しつこくて面倒くさいやつ。5人に比べ人間として色々としっかりしている上に明るいので交友関係も広いが、5人のことにはかなり首を突っ込む。トラックに撥ねられ死亡、そこから物語が始まる。あだ名の由来は当初不明だがモモからは「サムいからサムやー」などと言われていた。

 

モモの妹キララとカラオケ店の店員、振付師、元アイドル設定などは完全ドラマオリジナルです。

 

原作では著者の影響か全員口調が関西弁で、それを演じるメンバーで想像してしまうので何だか笑えてしまいます。彼らは軽薄な人間関係を続けてきた、仕事すら面倒くさがる一般の怠け者が点と点で自然と集まり(面倒くさがり同士居心地が良いため関係が続いた)、そこに性格が一味違うしっかり者のサムがいたといった感じです。サム以外の共通点は面倒くさがりでプロレス好きということ。

 

原作あらすじ

通夜でサムの本名やあだ名の由来、素顔を5人は初めて知ります。そういえばサムは5人に物凄く関心を持っていたけど、5人はサムのことをよくは知ろうとしなかった。他人に無関心な面倒くさがり達のなかで唯一サムだけが人に関心を持つ良き聞き手でした。その上で5人の生活や内面に容赦なく踏み込み叱咤し、煙たがられることもしばしば。そんな人物が突然死んだ。当初物凄く感傷的でもない5人は思い出話の中で初めてサムのことを考えます。思い出話の中でもやっぱりサムは鬱陶しい。鬱陶しいけどなぜだか心には残っている。サムは5人を想っていた。些細な変化をもたらしてくれていた。サムと自らの出来事を話しながら、5人はそこで初めてお互いのことをきちんと知ります。

そんな中、死んだはずのサムからメールが来ます。「トンダ。」と。メールの送信時刻はサムが死んだ頃の時間。サムはその頃死んでいたんだ。「サムも飛んだ。」5人を悲しみが包みます。

会場を後にしたアリは日常の風景を目にし、気付きます。面倒くさがりで他人に無関心な自分たちが思わず胸の内を明かし、互いを知ったのはサムのおかげ。そしてサムが死んだ後も日常は無責任に続いていく。サムは若くして死んだけど自分たちにはまだ長い道がある。皆でまた遊ぶ約束をし、物語は終わります。

 

 

 

個人的に物心ついた後に人の死に直面したことが無いので、こんな感じなのかなと想像して読むことが多かったです。最初はあまり感傷的ではなく、ふとした瞬間に死を実感するというのは確かにそうなのかな、とか。サムは親のようにお節介で鬱陶しくて、当たり前のようにいた。だけどもう傍にはいない。モモがサムのことを語りながらふと、それを実感して感情が溢れてしまう場面は愛おしく、感動しました。そして誰かが死んでも現実は、日常は、知らない顔をして変わらずに進み続けていく。残った者は進み続けるしかない。

サムの死について物凄く悲壮な雰囲気ではなく、死を機に5人はどこか変われたのかもしれません。究極遊びに行くことさえ面倒くさがる主人公たちがラストで遊ぶ約束をし、アリがバイトを切ってまで快諾するのはそういうことなのかなと僕は思っています。人の死は重く、辛いものだけど、この作品はどこか温かい気持ちに、そして希望を持たせてくれるように感じました。原作本は是非オススメしたいですね。

ただ中の人が『気づいたら片想い』MVのような乃木坂メンバーが死ぬといったような内容に弱すぎるのでドラマではまずサムの死の重さに耐えられる気がしません…さくらちゃん…キービジュアル皆笑顔だけどさすがに重いな…

 

 

・どうして人間としてまともなサムが堕落気味の5人によく構うのか。それは作中では明かされません。僕は5人の付かず離れずの関係が羨ましかった、自分に構って欲しかったのかなと勝手に考察しています。

・原作では誰も知らなかったサムの本名、あだ名の由来、家族、素顔の一部が明かされます。結構意外で面白いです。ただサムというあだ名の由来は分かっても何故これを名乗ったのかは不明です。

・ドラマ予告編ではサムの自殺説が浮上します。これは原作同様です。ただ原作ではサムの死について主人公含め読者が真相を知ることはありません。

結局サムのことは主人公らにも読者にも部分的にしか分かりません。この作品はサムのことが重要なのではなく、サムの死が主人公にとって小さな転換点となった事が重要だからなのかなと僕は思います。

ただこのままだと消化不良感は否めないのでドラマでは原作者の構想の外でも、脚本としての一つの答えは正直欲しいところです。

 

 

・原作ではガラケーのメールですが、ドラマはスマホのチャット系SNSになっています。中の人はガラケーが主流だった時代をギリ知っているので時代の流れを感じますね… 故サムからのメール「トンダ。」の意味は是非原作を読んでみて下さい。予告編的にはドラマでも言及されるかもしれませんね。

・ドラマではアイドルグループ解散(所謂カッコ悪い青春時代)後、各々重い問題を抱え(アリは継続的なもの)そこからの再起という感じですが、原作では彼らの一般人のやや堕落気味の生活はサムの死前後でもそこまで大きくは変わっていないですし、抱える問題も作中で解決はしていないです。なんなら最初から最後までカッコ悪いままです。ただ少しは良い方向に向かっていくだろうということは暗示されていると思います。ドラマでは再生まで示唆されているのでより劇的になっていると思います。その辺り期待ですね。

・葬式でアリ達が再会するドラマに対し、原作では出会ってから交際はずっと続いています。

 

という感じで、原作とドラマとの相違は結構あります。性別とかはもう端から違いますし。女性アイドルが原作の内容を演じるならこれは確かにコンプラ上色々とテコ入れは要るかなと思います。通夜前のモモの発言とか(笑)。いやアイドル設定みたいにテコ入れどころか土木工事くらいはしてるかもしれません。ドラマの方が表現はソフトになっていますかね、その代わり問題の重みは増しています。西加奈子先生が作中で表現したかったこと、物語の本質はドラマでも同じだと思いますが、人物、背景の設定はほぼドラマオリジナルと考えても差し支えないと思います。サムの面倒くささと掴み所の無さは変わらないようですが笑。

 

ドラマは"再生と希望"が原作のような些細な変化なのか、はたまた劇的に問題解決までいくのかは分かりません、見る人に少しでも希望を抱かせるような作品になることは間違いないと思います。個人的にはサムとさくらちゃんの性格がだいぶ違うのでどう演じたのか気になりますね。あとはプリンシパル唯一の三役制覇、今後演技でスターダムを駆け上がること間違いなしの聖来ちゃんの演技にも注目です。

プリンシパル以来に演じるということにぶつかっていった彼女達、借金・酒・嫉妬・LGBTとシリアスで重い様子、個性ある役柄をどう演じたのか、配信を非常に楽しみにしています。4期生達にとってドラマという経験もまた今後の大きな糧になるでしょう。大いに期待しております。

そしてサムの素顔、死の真相は_______________

残された彼女達はどう再生するのか_______________

 

4期生7名出演、dTVオリジナルドラマ『サムのこと』は3月20日(金)より配信開始です。

 

 

 

 

 

完全に4期生とdTVと小学館(原作本)の回し者になってしまったな(笑)、まぁ楽しみでクオリティも高そうなので本当により多くの人に見てもらいたいのは確かです。是非、乃木坂46の"今"を見て下さい。

ではこの辺で。